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串崎 真志 著、電子書籍・新刊『リフレクティブ・マインド:ふりかえる心の科学』の発刊の見通しが立ってきましたので、お知らせします。
書名:リフレクティブ・マインド:ふりかえる心の科学
著者:串崎 真志
発行年月:2013年12月
発行者:特定非営利活動法人ratik
ISBN:978-4-907438-02-9
電子書籍ファイル形式:EPUB・リフロー
文字数:約84,000字
販売価格:2,000円(予価、消費税込)
自分の思考や情動を「横に置き」しばし立ち止まって考える。
自分や他人のことを考え、過去や未来を思い浮かべる。
心理学、脳神経科学の最新の膨大な研究成果をもとに、
こうした「心のはたらき」の全体像を描く1つの試み。
【目次】
プロローグ 泣き虫な弟をなだめる兄
附録 この本に登場する脳の部位
Ⅰ 扁桃体をどう抑えるか
1 扁桃体は警報センサー
2 前帯状皮質はやさしいお兄さん
3 脳のなかの6人家族
4 楽観バイアスの進化論
Ⅱ ふりかえる脳
5 後ろを向きやすい性格
6 ふりかえる脳は前頭前皮質
7 相手のことを考える脳
Ⅲ 孤独は大敵
8 脳は孤独に弱い
9 人は情動的なつながりを求める
10 オキシトシン
Ⅳ ふりかえる力
11 異時点間の選択課題
12 未来を想像すると真面目になる
13 ふりかえる力の源
14 抑うつと反すうと前帯状皮質
Ⅴ ふりかえるには工夫がいる
15 距離を置いて考える
16 マインドフルネス
17 自分にどう言い聞かせるか
18 ポジティブ思考だけではだめ
19 考えないほうがいい?
エピローグ リフレクティブ・マインドとは何か
引用文献
【目次 (詳細)】
プロローグ 泣き虫な弟をなだめる兄
附録 この本に登場する脳の部位
Ⅰ 扁桃体をどう抑えるか
1 扁桃体は警報センサー
- 1-1 脳のなかの兄弟
- 1-2 扁桃体はネガティブな情動にかかわる
- 1-3 扁桃体はポジティブな情動にもかかわる
- 1-4 扁桃体をめぐる議論
- 1-5 扁桃体をどう抑えるか
2 前帯状皮質はやさしいお兄さん
- 2-1 前帯状皮質の吻側部
- 2-2 疲労の影響
- 2-3 注意のコントロールも重要
3 脳のなかの6人家族
- 3-1 眼窩前頭皮質
- 3-2 背外側部も重要
- 3-3 楽観バイアス
4 楽観バイアスの進化論
- 4-1 エラー・マネジメント理論
- 4-2 不安と怒り
- 4-3 適応的な錯覚
Ⅱ ふりかえる脳
5 後ろを向きやすい性格
- 5-1 神経症傾向と扁桃体
- 5-2 外向性と報酬系
- 5-3 誠実性とセルフコントロール
6 ふりかえる脳は前頭前皮質
- 6-1 リフレクティブ・セルフ
- 6-2 自分に似ている友人は「自分」
- 6-3 自分に関連づける
- 6-4 デフォルト・モード・ネットワーク
7 相手のことを考える脳
- 7-1 側頭頭頂接合部
- 7-2 視点取得の脳
- 7-3 メンタライジング・ネットワーク
- 7-4 人の痛みは自分の痛み
- 7-5 ちょっと横に置いておく
Ⅲ 孤独は大敵
8 脳は孤独に弱い
- 8-1 孤独はストレスを高める
- 8-2 サイバーボール課題
- 8-3 力になりたい人を思い出す
- 8-4 心の痛みは体の痛み
- 8-5 実際に排除されなくても
9 人は情動的なつながりを求める
- 9-1 情動伝染
- 9-2 アイコンタクト効果
- 9-3 アクティブ・セルフ理論
10 オキシトシン
- 10-1 絆のホルモン
- 10-2 オキシトシン受容体遺伝子多型
- 10-3 遺伝子・文化相互作用
Ⅳ ふりかえる力
11 異時点間の選択課題
- 11-1 未来志向の脳
- 11-2 眼窩前頭皮質も重要
- 11-3 疲労が現在志向にする
12 未来を想像すると真面目になる
- 12-1 未来の自分を見る
- 12-2 他人のアバターでは効果がない
- 12-3 中年になった自分を体験する
- 12-4 未来の自分を想像すると悪いことをしなくなる
- 12-5 想像すると悔しい、でも実際は平気
- 12-6 地下鉄におけるフィールド実験
13 ふりかえる力の源
- 13-1 実行機能がふりかえる力を支える
- 13-2 自然にふれると回復する
- 13-3 閉眼するほうが思い出しやすい
14 抑うつと反すうと前帯状皮質
- 14-1 前帯状皮質の膝下部
- 14-2 リアルタイム・ニューロフィードバック
- 14-3 注意のコントロール
- 14-4 テトリス実験
- 14-5 嗅覚の不調が抑うつを招く?
Ⅴ ふりかえるには工夫がいる
15 距離を置いて考える
- 15-1 セルフ・ディスタンシング
- 15-2 ふりかえりが怒りを抑える
- 15-3 ふりかえりが血圧を下げる
16 マインドフルネス
- 16-1 マインドフルネスとは
- 16-2 デフォルト・モード・ネットワーク再び
- 16-3 あえてふりかえらない
- 16-4 右脳が活性化する
- 16-5 わずか4日間の練習で
17 自分にどう言い聞かせるか
- 17-1 疑問型のフレーズを使う
- 17-2 I don’tのフレーズを使う
- 17-3 期待するか、想像するか
18 ポジティブ思考だけではだめ
- 18-1 メンタル・コントラスティング
- 18-2 寄付が増える
- 18-3 悲しい気分のほうがうまくいく
- 18-4 ふりかえることで合理的になる
19 考えないほうがいい?
- 19-1 直感的思考
- 19-2 楽しい気分で直感が当たりやすい
- 19-3 楽しい気分は論理を離れやすい
- 19-4 楽しいときは価値を高く見積もる
- 19-5 悲しいときは見慣れたものを好む
- 19-6 涙は援助を誘う
エピローグ リフレクティブ・マインドとは何か
引用文献
【著者紹介】
串崎 真志(くしざき まさし)
関西大学 文学部総合人文学科心理学専修 教授
博士(人間科学)
1970年山口県生まれ
愛媛大学 法文学部卒業、
大阪大学大学院 人間科学研究科 博士後期課程修了
総合研究大学院大学 文化科学研究科 博士後期課程中途退学
同志社女子大学 生活科学部 専任講師、
関西大学 文学部 准教授を経て現職
著書に、
- 『悩みとつきあおう』(単著)岩波ジュニア新書、2004年
- 『子ども中心プレイセラピー』(共訳)創元社、2010年
- 『自分をみつめる心理学』(単著)北樹出版、2011年
- 『共感する心の科学』(単著)風間書房、2013年
- 『協力する心の科学』(単著)風間書房、2013年
- 『心は前を向いている』(単著)岩波ジュニア新書、2013年
プロローグ 泣き虫な弟をなだめる兄 (本文から抜粋)
『今昔物語集』に「兄弟二人、萱草紫苑を殖ゑたる語」という話があります。大切な父親を亡くした兄弟が、悲しみに暮れる毎日を過ごしていました。しかしあるとき、兄はカンゾウ(ユリ科の多年草で「忘れ草」という別名がある)を植えて、その出来事を忘れることで前に進もうと決意し、弟はシオン(キク科の多年草で「君を忘れない」という花言葉がある)を植えて、悲しみを抱えて生きる道を選ぶ、という話です。今昔物語で描かれている兄弟は対照的ですが、あなたはどちらのタイプでしょうか?
ちなみに今昔物語は、弟の生き方を勧めています。この話の続きとして、墓守の鬼が出てきて弟の行いを褒め、予知夢の力を授けたという結末になるのです。悲しみを忘れてはいけない、というメッセージなのでしょう。もちろん、どちらがよいかはわかりません。どちらも一長一短なので、バランスが大切ということになりそうです。
兄は兄なりに、弟は弟なりに父親の死をふりかえり、決断しました。このように、私たちはさまざまな出来事を受けとめ、自分を見つめ、他者について考えます。過去を思い出し、未来を想像し、楽観的になったり悲観的になったりします。この本では、これらを総称して、ふりかえる心(リフレクティブ・マインド)と呼んでおきたいと思います。それは、どのようなメカニズムによるのでしょうか。そこには、どのような意味があるのでしょう。この本では、心理学や神経科学の新しい知見をもとに紹介していきます。
第Ⅰ部では、扁桃体の抑制が前向きな心につながることを、脳のなかの家族という比喩を使って説明します。第Ⅱ部では、ふりかえる機能を担っている脳に注目し、自分や他者について考える脳についてとりあげます。第Ⅲ部では、脳が社会的な絆を大切にしている姿を解説し、第Ⅳ部では、ふりかえる力と反すう思考について検討します。そして最後に、第Ⅴ部で上手にふりかえる方法を考えてみましょう。
この本では、全編にわたって、研究内容を具体的にお伝えすることに主眼をおいています。心理学の実験に慣れていない方には少し読みづらいかもしれません。ご容赦いただければと思います。脳の部位の名称についても、あまり気にしない方は読み飛ばしていただいてかまいません。なお、本文内の丸括弧つき数字からリンクする形で、巻末に引用文献を多数掲載しています。これらを参照し、より詳しい研究の世界に歩みを進めてくださることを願っています。
リフレクティブ・マインドは、きわめて心理学的な現象です。いっぽうで、とても地味な話題といえるでしょう。私たちはそれぐらい自然に、知らないあいだに(無意識的に)ふりかえっているのです。自分がどんなふうにふりかえっているかを、まず、ふりかえってみてください。ふりかえることは、人生を豊かにします。この本をとおして、そのことを理解していただければ幸いです。
さっそく、リフレクティブ・マインドの世界に踏み込んでみましょう。串崎 真志
本書『リフレクティブ・マインド』を読んでくださったみなさんは、恐らく「どうすれば上手く立ち止まって考えることができるのか?」「どのようなふりかえりかたをすれば、心地よく暮らしていけるのか?」といったことに某かのヒントが得られることでしょう。
近年の心理学や脳神経科学の研究から、脳はデフォルトには「前向き」に作られていることがわかってきました。
ここでひとまず「前向き」を、「物事に対する積極的で建設的な姿勢」と定義しておきましょう。人との関係において、ともかく相手を信頼することから始めてみる。まずは未来は明るいと信じて足を踏み出してみる。逆に、過ぎてしまったことをネチネチ後悔しない…などが、こうした姿勢にあたるかもしれません。
でも、私たちはいつも「前向き」でいる訳ではありません。では、脳とは、どのような具合にポジティヴに出来ていると言えるのでしょうか。またネガティブになるとはどのような時なのでしょうか。さらにはネガティブな気持ちをポジティブにする方法はあるのでしょうか。
或る意味では『リフレクティブ・マインド』とお互いに中身を補っていくような、串崎さんの素敵な新刊書籍が、下記のとおり同じ時期に出版されます。よろしければ、2冊合わせてお読みいただけますと幸いです。〔ratik・木村 健〕
書 名:心は前を向いている
著 者:串崎 真志
出版社:岩波書店(岩波ジュニア新書)
発行年:2013年12月21日