日本マインドフルネス学会の機関誌「マインドフルネス研究」で、投稿論文の受付が始まりました。今後、査読・審査済みの論文が随時公開され、電子ジャーナルとして、とりまとめられていくことになります。
マインドフルネス(mindfulness)は、仏教瞑想に由来し、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」として定義される、自己の体験に対する特殊な注意の向け方です。ここでの「観る」には、見る・聞く・嗅ぐ・味わう・触れる、さらにそれらによって生じる心の働きをも観る、という意味が込められています。
マインドフルネスをめぐっては、1980年頃に、マサチューセッツ大学の医療センターで、その臨床的応用法が確立されて以降、世界的に注目を集めるようになりました。今日では、慢性的な身体の痛み、頭痛、皮膚病、高血圧などの身体疾患のほか、拒食症、うつ病、自殺企図、強迫神経症、不眠、不安症、パニック障害、アルコール・ニコチン・薬物依存などの精神障害の治療に関する効果が実証されています。さらに、単に病気の治療のみならず、各種疾患に対する予防や、ガン患者のQOLの向上、人間関係の改善、 創造性の涵養などの効果が認められることから、産業界からも注目されています。
マインドフルネスの多様な効果は、近年、脳科学による解明も急速に進み、学際的に注目されています。こうした動向を受けて、2010年には、マインドフルネスに特化した専門誌がSpringer社より刊行されました。しかし、わが国では、一般書の刊行が先行し、これまで学術的な情報を発信する媒体がありませんでした。
昨年(2013年)末、科学実証主義/エビデンスベースドの枠組みの中で、この領域に関心のある研究者や実践家がネットワークを作り、お互いの知見を交換し合い、議論・検討する場を目指し、日本マインドフルネス学会が設立されました。また、この間、学会の設立主旨の実現のために、定期刊行の機関誌の立ち上げに向け、検討が続けられていました。
ratikは、電子ジャーナル「マインドフルネス研究」の基本設計段階から吟味に参加をさせていただきました。また、今後「編集事務局」として、ジャーナルの発刊に尽力していきます。
「マインドフルネス研究」では、心理学、精神医学、心身医学、教育学、哲学、宗教学など、研究分野を問わず、広くマインドフルネスに関わる論文の投稿を募集しています。また、マインドフルネスと直接的に関連せずとも、注意や気づきなどの認知プロセスの基礎研究、あるいは、座禅やヨーガ、呼吸法などを含めた各種実践に関する基礎及び応用研究も歓迎しています。さらに、この領域全体の研究・実践の公正な進展を目指す意味で、介入の「成功例」だけでなく、「失敗例」も積極的に掲載する方針を取っていることも、大きな特徴といえるでしょう。
マインドフルネスに関わる良質な取り組みの成果が蓄積されていくことに、大きな期待を寄せています。〔ratik・木村 健〕