利便性が注目される電子書籍ですが、ページ・レイアウトの調整機能が、文章の読解に苦しむ人びとに光明を与える研究結果がPLoS ONEに掲載されています。
Matthew H. Schneps, Jenny M. Thomson, Chen Chen, Gerhard Sonnert, Marc Pomplun. E-Readers Are More Effective than Paper for Some with Dyslexia. PLoS ONE, 2013; 8 (9).
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多くのディスレクシアの症例の要因の1つとして、視覚的注意に関する欠陥が指摘されています。これは、単語中の文字に意識を集中したり、行内に含まれる単語に意識を集中したりすることが難しい状態を指しています。また、他の要因として、単語中に紛れ込んでしまうことで、1つ1つの文字を認識し損なう状態なども指摘されています。
リフロー型電子書籍、それらを、とりわけ手のひらサイズのリーダーで読む際には、文字の大きさなどを調整することで、1行あたりの単語数をかなり少なくすることができます。今回の研究では、こうした機能を使うことで、文中の視覚的な混乱要素が取り除かれ、読解が促されることが示されています。
この研究が対象としたのは「英語文」の読者でした。たとえば、前後に空白が無く各単語が文中で容易に識別できないなど、文字にした場合の視覚的な見え方が異なる「日本語文」に関しても、こうした研究が妥当するのか、という点は検証が必要でしょう。これは、一口にディスレクシアと言っても、視覚的な言語の特性によって様相が異なるのではないかということにも繋がってきます。
ただ、手のひらサイズのリーダー(私が愛用しているのはiPod touchですが…)で文章を読む際の実感として、この研究成果は日本語文に関してもあてはまっているのではないか、という気がします。〔ratik・木村 健〕