「魚は人間と同じようには痛みを感じない」…。神経生物学者、行動生態学者、水産科学者らから成る研究グループが、こうした結論を導き出しています。人間の意識下にある「痛み」のメカニズムが、神経生理学的に明らかになってきたことで、ヒト/魚の違いが科学的に精緻に捉えられるようになったのだと思います。
物理主義を採るならば、これで一件落着となるでしょう。しかし、たとえ同じタイプの神経生理学的プロセスが実現していたとしてもなお、「あなたは、私と『同じ』痛みを感じているのだろうか?」という「問い」の余地が残ってしまうように感じるのは何故でしょうか。哲学的には古くて新しい謎にも寄り添っていきたいと考えています。〔ratik・木村 健〕
J. D. Rose, R. Arlinghaus, S. J. Cooke, B. K. Diggles, W. Sawynok, E. D. Stevens, C. D. L. Wynne. Can fish really feel pain? Fish and Fisheries, 2012.