ラットを用いた研究で、自然に形成される「報酬の記憶」のメカニズムと、薬物などによる中毒において形成される「報酬の記憶」のメカニズムとが異なることが明らかになりつつあります。Nature Neuroscience誌に論文が掲載されています。
Jeremy J Day, Daniel Childs, Mikael C Guzman-Karlsson, Mercy Kibe, Jerome Moulden, Esther Song, Absar Tahir, J David Sweatt. DNA methylation regulates associative reward learning. Nature Neuroscience, 2013.
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快楽や報酬に関わる記憶は、適応的な行動や進化的な生存において、重要なファクターです。また、この記憶のメカニズムは、薬物などによる中毒を説明していく上でも解明が求められるものです。
これまでの研究により、報酬学習において、腹側被蓋野(VTA:ventral tegmental area)に位置するドーパミン・ニューロンが「先行するキュー」と「将来の報酬」との関係性をエンコードしていく働きが認められてきました。また、自然に形成される「報酬の記憶」と、薬物などによる中毒において形成される「報酬の記憶」とが同じメカニズムを共有することから、「中毒」が「ノーマルな報酬記憶」の経路を乗っ取ると考える理論が一般的でした。
今回の研究は、DNAメチル化といったエピジェネティックなメカニズムにおいて、「中毒」と「ノーマルな報酬記憶」とが異なっていることを示していく端緒となるものです。今後の臨床的な応用に繋がっていく可能性もあり、注目すべき成果であると考えられます。〔ratik・木村 健〕