「5,000人」以上を対象にした実験と「約15年間の追跡調査」から、視覚的に提示された刺激に対する「反応が遅かった人」のほうが、後の「生存率が低く」なっていることが分かったというアメリカでの研究が、PLoS ONEに掲載されています。
Gareth Hagger-Johnson, Ian J. Deary, Carolyn A. Davies, Alexander Weiss, G. David Batty. Reaction Time and Mortality from the Major Causes of Death: The NHANES-III Study. PLoS ONE, 2014; 9 (1): e82959 DOI: 10.1371/journal.pone.0082959
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「反応速度」を測定する実験は、いたってシンプルで「パソコン・スクリーンに或る画像が現れたら(なるべく早く)ボタンを押す」というものでした。実験参加者は、20〜59歳までの5,134名(うち男性が2,342名)で、その後15年の生死が追跡されました。
結果は、参加者のうち378人が亡くなりました。そして、実験で「反応に多くの時間を要していた人」のグループで、「死亡のリスクが高まっている」(25%)ことが分かりました。また、この傾向は「年齢」「性別」「エスニック・グループ」「社会・経済的背景」「(喫煙、飲酒などの)生活スタイル」といった要因を考慮に入れたとしても、成立するとのことです。
ちなみに、反応時間の長短と、ガン、呼吸器疾患による死亡との連関は、この調査実験では明らかにはなりませんでした。
研究グループによると、反応時間は、中枢神経系のベーシックな側面を反映しており、情報処理の速度は、基礎的な認知的能力とみなされています。「反応時間の長短」は、或る意味では、中枢神経系を中心に「身体の種々のシステム」が、どの程度、上手く機能しているかを示しているとも言えます。そして、新規の情報に対して、いつも鈍くしか反応できない人は、「早死のリスクを高めるような問題」に多く遭遇してしまうのではないか、と研究者グループは推測しています。
息子が持っている「色々な動物を紹介する絵本」には、「なまけもの」に対する作者の暖かい眼差しが感じられます。「いらち」を自認しているものの、本当を言えば、私も、他人を「早く!」「急いで!」とせきたてたくはないのです。
現代社会の有り様を感じさせる実験調査結果でもあり、なんだか悲しくなりました。連れ合いの「反応時間」がとても気にかかります。〔ratik・木村 健〕