「自己統制(Self-regulation)」の視点から、「健康」に対して「宗教性」「スピリチュアリティ」が異なる経路で相補的に影響する、という「新しい理論モデル」を提起する研究がPsychology of Religion and Spirituality誌に掲載されています。
Aldwin, C. M., Park, C. L., Jeong, Y. J., & Nath, R. (2013). Differing Pathways Between Religiousness, Spirituality, and Health: A Self-Regulation Perspective. Psychology of Religion and Spirituality, 2014; 6 (1): 9 DOI: 10.1037/a0034416.
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オレゴン州立大学の研究グループは、「宗教性」「スピリチュアリティ」が「健康」に与える影響に関して、
- 「宗教性」は「行為」「習慣」を自ら健康的に統制するのを助けるのに対し、
- 「スピリチュアリティ」は「情動」すなわち「自らがどのように感じているか」を統制するのを助ける
という理論枠組みを提起する研究を公表しています。
この研究で扱われている「宗教性」には「公的な宗教団体への加盟」や「宗教行事・事業への参加」などが含まれ、「スピリチュアリティ」には「瞑想」「個人的な祈り」などが含まれるとのことです。
また「健康」への影響ということで、こうした意味での「宗教性」は、たとえば「低喫煙率」「アルコール摂取量の削減」など「健康的な生活習慣」に結びつきやすく、「スピリチュアリティ」は「情動」の統制に役立つことで「心理的効果」(たとえば「血圧」の適正化)を生み出す、といった結果が示されています。
「健康」に対する「宗教性」「スピリチュアリティ」の影響を考える上で、元々当人が有している千差万別なものを考慮していかねばなりません。その意味で、この研究で注目されている「自己統制」という切り口は有効なものとなり得るのかもしれません。
他方で「宗教性」「スピリチュアリティ」を「どのようなもの」と定義して研究を進めるかによって、描かれる因果連鎖の経路も異なったものになっていきます。さらには、あらゆる「社会」「文化」において一様に「宗教性」「スピリチュアリティ」を「そのようなもの」と前提して研究していけるかも、考えていかねばならないでしょう。
「宗教性」「スピリチュアリティ」が私たちの生活に影響をもっているのは確かです。この研究で試みられているように、理論的モデルが提起されることで、今度は逆に私たちにとって「宗教性」「スピリチュアリティ」が「何であるのか(何ではないのか)」が分かってくるのかもしれません。〔ratik・木村 健〕