ジェンドリン哲学の全貌を明らかにする。
ユージン・ジェンドリン(Eugene T. Gendlin, 1926-)。
彼の名前は、フォーカシング(focusing)と呼ばれるカウンセリング技法の開発者として、臨床心理学の領域では世界的に有名です。しかし、彼はまた、学部・大学院ともに大学では「哲学」を学び、博士号も「哲学」で取得し、現在に至るまで一貫して哲学の論文を発表しつづける「ラディカルな経験論」「新しい現象学」の提唱者でもあるのです。
「フォーカシングの実践のために、哲学を理解する必要はない」。
…このようにもとれるジェンドリン自身の発言のためか、世界でフォーカシング研究が盛んになればなるほど、ジェンドリン当人の哲学的な仕事は影に埋もれていくといった事態がもたらされています。
ジェンドリンは、人間の体験とはいかなるものかという問いを探究しつづけています。しかし、それは「人間が哲学する」という営みに対しても同時に当てはまる2階second orderの思考であるという意味で、メタ哲学でもあるのです。つまりジェンドリン哲学は「哲学するとはいかなることなのか」という問いの探究としての哲学ともいえるでしょう。たしかに、フォーカシングを実践するために、「そもそも哲学するとはいかなる実践なのか」と考えることが要求されるわけではありません。
他方、フォーカシングを実践していく上で、フェルトセンスとはいかなるものであり、それを直接照合するにはどのようにしたらよいかという理解は不可欠です。そしてジェンドリン哲学とは、まさにフェルトセンスとは何であり、それが、われわれの体験過程においてどのように働いているのかを問うものです。ジェンドリン哲学がもつ、この階層性、それゆえにこそ、…
「フォーカシングを行うためには、哲学を理解する必要がある」。
このたび「体験を問いつづける哲学」全3巻シリーズの刊行を開始し、ジェンドリン哲学の全貌を明らかにしていきます。本シリーズにより、国内初めての、さらには世界的にも貴重な「ジェンドリン哲学」の本格的な解明が実現します。どうぞ、ご期待ください。
第1巻 初期ジェンドリン哲学と体験過程理論
2015年10月28日から書籍紹介ページで販売を始めました!
発行者:特定非営利活動法人ratik
ファイル形式:EPUB リフロー、PDF
ISBN:978-4-907438-18-0(EPUB)
ISBN:978-4-907438-19-7(PDF)
文字数:約23万字
販売価格:2,500円(消費税込)
ジェンドリンの修士論文を概説、ディルタイ研究から体験過程理論に至る背景を探る。
1962 年出版『体験過程と意味の創造:主観的なものへの哲学的、心理学的アプローチ』Experiencing and the creation of meaning: A philosophical and psychological approach to the subjective の各章を詳論。
【第1巻・目次】
序 章
1. はじめに―フォーカシングというカウンセリング技法―/2. 哲学者としてのジェンドリン―生い立ちと経歴から―/3. 本シリーズの構成
第1章 ジェンドリン哲学の起源
1. 出発点としてのディルタイ研究/2. ジェンドリン思想とのつながり―ジェンドリンは何に注目していたのか―
第2章 『体験過程と意味の創造』(ECM)の概要
1. 本章の目的/2. ECMの構成―哲学的考察と行動科学的探究―/3. フォーカシング理解に、哲学は必要ないのか/4. ECMの章構成
第3章 フェルトセンス、感じられた意味とは何か
1. 意味をめぐる考察/2. 「前概念的」が意味するもの/3. 体験過程のあり方―シンボルとの相互作用―/4. 「体験過程」「感じられた意味」について/5. 体験過程-3つの特性-/6. 体験過程/感じられた意味の機能
第4章 フェルトセンスとシンボル化の機能的関係
1. 7つの機能的関係―平行的関係/非平行的関係―/2. 平行的関係/3. 非平行的関係
第5章 感じられた意味の多様な規定と論理的規定
1. 感じられた意味に関する恣意性の問題/2. 感じられた意味の先行性/3. 感じられた意味と論理的規定との対比/4. 感じられた意味の9つの特徴/5. 意味創造としての思考
第6章 哲学原理としてのIOFI原理
1. 方法論的カテゴリーの創造/2. 意味を意図的に再帰的にすること/3. IOFI原理の導入/4. IOFI原理の有用性と相対性/5. ユニークなものの理解/6. IOFI原理の主張はいかなる意図をもっているのか
第7章 体験過程理論の適用
1. 哲学的方法論/2. 哲学における個別問題―意味の源泉・知性の依存―/3. 心理学への適用
結びに代えて―総括と次巻の予告―
続巻、鋭意、刊行準備中!
■第2巻 ジェンドリン哲学の展開(仮題)
・フォーカシング(フォーカシング指向心理療法)、「新しい現象学」、『プロセスモデル』…etc.
■第3巻 ジェンドリン哲学の継承と発展(仮題)
・ジェンドリン哲学の今後の可能性、「一人称科学」「二人称の科学」、用語集…etc.
【著者紹介】
三村 尚彦(みむら なおひこ)
関西大学文学部総合人文学科教授
博士(文学)関西大学
1988年、関西大学文学部卒業、
1997年、関西大学大学院博士課程修了
専門は、哲学、現象学
日本哲学会、日本現象学会、関西哲学会、日本人間性心理学会、日本ディルタイ協会 所属
本シリーズ関連論文として
- 「ジェンドリンとフッサール:進展(carrying forward)の現象学」『ディルタイ研究』第20号、日本ディルタイ協会、2009年、63-79頁
- 「ジェンドリンとポストモダニズム:プロセスの論理」『関西大学文学論集』第59巻第3 号、2009年、1-26頁
- 「そこにあって、そこにないもの:ジェンドリンが提唱する新しい現象学」電子ジャーナル『フッサール研究』第9号、フッサール研究会、2010年、15-27頁
- 「志向的含蓄と体験過程:フォーカシングという現象学」『アルケー』19号、関西哲学会、2011年、60-74頁
- 「追体験によって、何がどのように体験されるのか:ディルタイとジェンドリン」『関西大学文学論集』第62巻第2号、2012年、27-48頁
- 「記述的心理学と体験過程理論:ジェンドリンがディルタイから継承したもの」『ディルタイ研究』23号、日本ディルタイ協会、2012年、74-88 頁
- 「感じ、記述すること:身体の現象学とその方法論」『現象学年報』第29号、日本現象学会、2013年、51-58頁
- 「身体による一人称的パースペクティブの拡張:二人称の科学としての現象学」『日本トランスパーソナル心理学/精神医学会誌』vol.13、2013年、24-33頁
- 「質的研究とTAE(Thinking At the Edge):ジェンドリン哲学にもとづいて」『関西大学文学論集』第63巻第3号、2013年、53-76頁
- 「ジェンドリン哲学と認知科学:フォーカシング指向現象学の射程」『第1 回TAE 質的研究国際シンポジウム報告書』宮崎大学、2014年、14-25頁
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■結局、何で読めば良いのか?
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(参考情報)
ratikで編集・制作をご担当させていただいている〈身〉の医療研究会・機関誌『〈身〉の医療 第1号(2015年)』にて、池見陽先生(関西大学心理学研究科 臨床心理専門職大学院 教授)の論文「スペースをめぐる臨床と瞑想:アレキシソミアへの話題提供」をお読みいただけます。