現実の大規模社会実験に付随させた調査に基づき、「他者から見られ得ること」が「間接的互恵性」を支える大きな要因となっていることを明らかにする研究成果がthe Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載されています。
Erez Yoeli, Moshe Hoffman, David G. Rand, and Martin A. Nowak. Powering up with indirect reciprocity in a large-scale field experiment. PNAS, June 10, 2013
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「間接的互恵性」の成立に関する進化論的説明のなかで、「他者からの評判」の重要性については以前から言及されてきました。またそうした評判が成り立つ上で、当該の行為が「他者から観察可能であること」が必要になってきます。この研究の功績としては、
- 2,413人という調査規模の大きさ
- 「ブラックアウト(大停電)回避」のための現実の「まちぐるみ」の社会実験の中で巧みに調査がデザインされていること(例えば、本体の社会実験の参加者は、エアコンにディヴァイスを装着し、電力ピーク時に稼働抑制に協力しなればならない)
などが挙げられるでしょう。
調査では、「25ドル」といった金銭的報酬が実験参加率をわずかにしか押し上げないのに対し、当人の実験参加を周囲に可視化することで、その3倍もの参加登録が促された劇的な結果が出ています。
調査結果は、人を「公益」に資する行為に向かわせるといった目標には向けられています。しかし他方で、「公益」が戦時中の「集団的な戦争協力」のようなものに置き換わったとしても妥当するような調査結果だとすれば、少々恐ろしい気もします。〔ratik・木村 健〕