冤罪において、たとえ無実が判明したとしてもスティグマは残存し、人々の偏見から解放されることはない…。古くからのテーマに体系的に取り組んで行くための研究ステップが踏み出されたことがLegal and Criminological Psychology誌で伝えられています。
Clow, K., and Leach, A. (2013). After innocence: Perceptions of individuals who have been wrongfully convicted. Legal and Criminological Psychology
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調査は、カナダの心理学部の大学生86人を対象に実施されました。質問紙は、
- 無実の罪で誤って収監されてしまった人
- 実際に犯罪に関与して収監された人
- 普通の人
に関して尋ねる形式になっています。調査の結果、次のようなことが明らかになっています。
- 学生は「犯罪者」と同様に「冤罪被害者」に対して「無能」「冷淡」といったレッテルを貼り、ネガティヴな態度をとっている
- 学生が「冤罪被害者」に対してとろうとする社会的距離は「犯罪者」に対するものよりは近いが、それでも「普通の人」に対してとる距離よりも遠い
- 学生は「冤罪被害者」に同情を示そうとはするが、それは、より具体的で積極的な支援へと繋がるものではない
少人数の学生を対象にした研究であるだけに、一般化には慎重にならざるをえません。しかし、冤罪のもつ恐ろしさの一端を示すのに十分な結果であるといわざるを得ません。〔ratik・木村 健〕