建築環境や家具の選択・配置などにより、私たちの身体は種々の姿勢を強いられます。ごく僅かにしか思えない姿勢の違いが、実は人の心や行動に大きな影響を与えてしまうことを示す研究成果が公表されています。
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オフィスの廊下、事務スペースの机・椅子から自動車運転席のシート周りにいたるまで、私たちの身体は身の回りの環境に制約される形で、種々にサイズや形を変更しています。こうした姿勢の違いは、通常、当人の注意が払われるものではありません。しかし実際には、こうした姿勢の変化こそが、私たちの心の有り様を大きく変え、態度や行動となって目に見えるものとして現れるのです。
今回の実験では、机上の作業スペースを「ゆったりと大きく確保した場合」と「狭く限定した場合」に分けて、実験参加者に筆記試験を受けてもらいました。その結果、前者のケースにおいて不正をはたらく者が有意に多くなっていました。また、ドライビング・シミュレーションにおいて、ハンドル、シート、アクセル、ブレーキ、クラッチなどからなる運転スペースを「ゆったりと大きく確保した場合」と「狭く限定した場合」に分けて、実験参加者に到達スピードを要求する課題に取り組んでもらいました。この結果でも、前者のケースにおいて「当て逃げ」など横柄な運転が多発したということです。
この研究では、人は一般に、ゆったりと余裕のある身体姿勢をとると力能感が増し、不正や横柄さがつくりだされるという結論を引き出しています。こうした成果は、オフィス設計の際の人間工学などに応用されていくべきであるのと同時に、心や行動の生起の解明に多くの示唆を与えてくれます。〔ratik・木村 健〕