4ヶ月間アフガニスタンに派遣されたドイツ人兵士の虚偽記憶形成を扱った研究がEuropean Journal of Psychotraumatologyに紹介されています。この研究は一連のPTSD研究の一部をなすものです。
Lommen, M., Engelhard, I., & van den Hout, M. (2013). Susceptibility to long-term misinformation effect outside of the laboratory. European Journal of Psychotraumatology, 4
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派遣後、任期中に起こった「ストレスフルな出来事」を尋ねる兵士249人へのインタビューの中で、実際には起こらなかった「自らの基地へのミサイル攻撃」に関する質問が組み込まれていました。この時点で、8人をのぞく241人が「記憶にない」と正しく答えていたのですが、7ヶ月後、同じ質問に対して「覚えている」と答えた者の割合は26%に跳ね上がったということです。
虚偽記憶形成に関する実験室実験は、これまでにも多数ありましたが、今回の研究の新しさは、現実世界での記憶形成が鮮やかに捉えられている点にあります。また、虚偽情報の提示が「言明」ではなく「質問」の文脈でなされたのに過ぎないのに、これだけの高率で虚偽記憶が形成されているという点も看過できません。
今回の研究では、このケースでの「虚偽記憶形成」が「IQの低さ」「PTSD症状の深刻さ」と連関していることが指摘されています。〔ratik・木村 健〕